第五話  ラウの絵  朝ごはんを食べ終わると,ラウはさっそく準備を始めました. 「さあ,こっちへ・・・そこのいすの上に座って」  真っ白なキャンバスを見ながら,ラウが前のいすを指差しています.  ブルーは大人しく,ちょこんと座りました. 「しばらくそのままでいてね・・・」  ラウは筆をとりました.  はじめはただの黒い塊でしたが,徐々にそれが子猫の形になっていきます.  ブルーはラウがいま何をしているのか見たくて仕方がありませんでしたが,言われたとおりじっとしていました. 「ふぅ・・・君きれいな瞳の色をしてるね」  ブルーが退屈で仕方がなくなったころ,ラウが口を開きました. 「にゃー・・・」 「よし,特別な青色で塗ろう」  そう言って,小さな木箱を取り出します.  ブルーはその箱を見て,びっくりしました. (おじいさんの所にあった木箱とおんなじ・・・) 「にゃー・・・」 「これかい? これはリミテッド・ブルーっていう,魔法の絵の具さ」  ラウは当然のように,わくわくするようなことを言います. (魔法の絵の具・・・?)  ブルーは,何が起こるのか興味しんしんでした.  ラウは「魔法の絵の具」でブルーの目を塗ります.  ブルーは絵の完成を今か今かと待っていました. 「よし,できたよ・・・」  ラウが静かに言いました.  ブルーがいすから飛び降りて,絵の前に駆けよってきます. (わー・・・きれいだ)  ブルーの黒い毛並みは,いくつかの濃さの黒で見事に再現されていました.  そして, 「きれいな青だろ・・・?」 「にゃ・・・」  絵の中のブルーの目は,まるで空のようなきれいな青色で塗られていました. 「にゃーにゃー」  ブルーはどこが魔法の絵の具なのか,気になっていました.  ラウは窓を開けて外を見ました.  いい天気で,そこから青い空がよく見えます. 「それはね・・・」  ラウが外を見たまま言います. 「この絵の具の青は,あの空でできているのさ・・・」  その日の夜のことでした. 「あんたの絵,見たよ・・・」  2階にいたブルーの元に,ミアがやってきました. 「ラウの絵,すごく素敵でしょ? 心がきれいだから,あんなにきれいな絵が描けるのかな」 「にゃー・・・」 「ん? あんたもそう思う?」  ミアはそう言ったきり,しばらく黙ってしまいました.  ブルーはそんな彼女を,心配そうに見つめています. 「あたしね,ラウに無理やりついて来ちゃったんだ・・・」  ミアの話によると,ラウは絵描きとして一人前になるために,この絵の街にやってきたようです.  この街には,たくさんの偉大な作品を生み出した絵描きたちがすんでいました.  そして,これからそれを目指す人たちも.  ラウもその一人でした. 「あたしは,ラウの絵が好きなの」  ミアはとてもうれしそうに,ラウが自分の絵を描いてくれたときのことを話します. 「どんなことがあっても,あの絵があたしを元気にしてくれるの」  ブルーにはその絵がどんな絵か,もうわかっていました.  きっと,おじいさんのところで見た,あの笑顔がかかれているのでしょう.